不妊治療について不妊治療について

不妊とは

避妊を行わずに夫婦生活を営んでいる場合、全体の約80%の夫婦が1年以内に妊娠するとされています。日本産科婦人科学会では1年以上経つが、妊娠しない状態を不妊としており、その割合は現在6組に1組であるといわれています。

不妊の原因

不妊の原因は、男性側、女性側、あるいはその両方にある場合がありますが、検査で原因が特定できないこともあります。

  • 女性側の原因
  • 1.排卵因子規則的に月経がある女性の場合、月経の2週前には排卵が起こります。一方、月経が不規則な女性の中には、月経があっても排卵がない方がいます。排卵しないと妊娠することはできないため、排卵を起こす治療を行います。排卵があるかについては、基礎体温を記録するとご自身で確認することが可能です。
  • 2.卵管因子卵管は、排卵した卵子を取り込み、卵子と精子が受精する場所です。卵管の炎症や子宮内膜症により卵管が閉塞していると妊娠することができません。子宮卵管造影検査で卵管の通過性を調べることが可能です。
  • 3.頸管因子排卵が近づくと、子宮頸管から粘液が分泌され、精子が子宮内に進入しやすくなります。粘液の量が少ないと子宮内に進入する精子が減少し妊娠しづらくなります。自宅で性交渉した後に病院で頸管内の精子を観察することで状態を調べることが可能です。
  • 4.免疫因子免疫は、細菌やウイルスなど異物が体に進入しないための大切な反応です。一部の方で、精子の運動性を失わせる抗体(精子不動化抗体)を持つ女性がおり、妊娠しづらい状態となります。血液検査で調べることが可能です。
  • 5.子宮因子受精した胚が着床する場所である子宮内膜にポリープがあったり、子宮筋腫により子宮内膜が変形していたりすると、妊娠がしづらくなります。子宮鏡検査で子宮の内腔に異常がないかを調べます。
  • 男性側の原因
  • 1.造精機能障害精子数の減少や精子の運動率低下がみられます。精液検査を行うことで調べることが可能です。
  • 2.精路通過障害精巣で造られた精子が、精管の閉塞により排出されない状況です。
  • 3.性機能障害勃起障害や腟内射精障害などがあり、ストレスや糖尿病などが原因と考えています。

不妊の検査

治療を行う前に、不妊の原因について以下の方法で調べます。

  • 女性側の検査
  • 1.内診・超音波検査子宮筋腫、卵巣嚢腫、子宮内膜症の有無につき調べます。
  • 2.血液検査女性ホルモンをはじめ、甲状腺ホルモンや母乳に関連があるプロラクチンなどを調べます。
  • 3.子宮卵管造影検査X線撮影室で、子宮内腔の形や卵管の通過性を調べます。
  • 4.性交後試験(フーナーテスト)排卵直前の妊娠しやすい時期に性交渉を行い、子宮頸管内の粘液に運動精子を認めるかを調べます。
  • 5.子宮鏡検査着床を妨げる可能性がある子宮内膜ポリープの有無につき、内視鏡で確認します。
  • 男性側の検査
  • 1.精液検査精液量、精子数、運動率、奇形率を調べます。

不妊の治療

不妊の状態は個々で異なりますので、個人の状態に合わせた方法で治療を行います。以下、代表的な治療方法です。

  • 1.タイミング法診察で排卵日を予測し、妊娠しやすい時期に性交渉を持っていただく方法です。排卵日前後の通院が必要です。
  • 2.排卵誘発法
    • 〇アンタゴニスト法

      月経3日目から排卵誘発剤(注射)を使用し、その5日後から自発的な排卵を抑制する薬(注射)を使用します。

    • 〇アゴニスト法

      自発的な排卵を抑制する薬(点鼻薬)を月経初日から使用し、月経3日目から排卵誘発剤(注射)を使用します。

    • 〇黄体ホルモン法

      月経3日目から排卵誘発剤(注射)を使用し、その2日後から自発的な排卵を抑制する薬(内服薬)を使用します。

    • 〇クロミッド法

      月経3日目から排卵誘発剤としてクロミッド(内服薬)を使用し、適宜、注射の排卵誘発剤を使用します。
      注射の排卵誘発剤は、通院回数を少なくするために自宅での自己注射を薦めています。

  • 3.人工授精精液を洗浄することで精子濃度をあげ、細いカテーテルで子宮内に注入する方法です。排卵日に行います。タイミング法で妊娠しない方、頸管因子を持つ方、射精障害の方に対して行います。
  • 4.手術
    • 1)子宮鏡下手術

      着床の環境を改善するために行います。
      子宮内膜ポリープや子宮内腔に突出した子宮筋腫を摘出します。入院が必要となります。

    • 2)腹腔鏡下手術

      骨盤内の環境を改善するために行います。
      子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫、卵管留水症、卵管周囲癒着の治療を行います。

    • 子宮鏡下手術および腹腔鏡下手術は、他院で不妊治療を受けている方に対しても行っております。

  • 5.体外受精

    腟の方から細い針で卵巣から卵子を取り出し、体外で精子と卵子を受精させ、受精した胚を数日後に子宮内腔へ戻す治療です。本治療の大きな特徴は、受精が確認できることです。卵管が閉塞している方や、他の治療で妊娠しない方に対して行っております。

    • 1)採卵

      麻酔を使用し、なるべく多くの卵子を回収する方針としています。

    • 2)精子の調整法

      精子の状態が不良の際は、精子のDNA損傷を引き起こす遠心分離は行わず、マイクロ流体技術を用いて良好な精子を回収します。顕微授精では、ヒアルロン酸を用いて成熟精子を選別します。

    • 3)胚移植

      GM-CSF・ヒアルロン酸含有培養液を使用しています。

  • 6.顕微授精

    精子の数が極めて少ない場合や運動率が極めて低い場合は、卵子と精子を同じ容器の中にいれ一緒に培養を行う媒精では受精が困難です。精子の状態が不良な場合や過去の体外受精で受精障害が認められた場合に顕微授精を行います。

    顕微鏡の画像

保険適用

保険に適用される回数には、「40歳未満で6回」、「40歳以上43歳未満で3回」と制限があります。
他院から本院に転院される際には、治療の経過がわかる資料をお持ちください。
保険適用に関しては、厚生労働省のホームページをご覧ください。

・不妊治療に関する取組|厚生労働省

当院では、成績向上のために保険診療に加え先進医療を行っております。
先進医療は自費負担となりますが、助成制度がありますのでご利用ください。

・東京都特定不妊治療費(先進医療)助成事業の概要|東京都福祉保険局